小田原の江之浦、蜜柑畑があった相模湾を望む見晴らし良い高台に日本を代表する現代美術作家・杉本博司(すぎもと・ひろし)が、“自らの集大成となる作品”と表現する「小田原文化財団 江之浦測候所」を作りました。測候所というのは、通常は気象観測などをする場所を言いますが、ここは“世界や宇宙と自分との距離を測る場”という意味もあるそうです。
杉本博司さんは、現代美術作家としてだけではなく、写真家、建築家、さらに文楽の総合監督、骨董品の蒐集家など、さまざまな顔を持たれます。2013年にはフランス芸術文化勲章を授賞、2017年に文化功労者にも選ばれています。最近は、NHKの大河ドラマ「青天を衝け」の題字を書かれたことで有名です。
江之浦測候所は、美術館?、博物館?、現代建築?、庭園?、劇場?、どれもあてはまりますが、ぴったりとくる表現はありません。一言でいうと杉本先生の作品やコレクションの展示場?杉本先生のことをよく知らないと、その価値はわからないかもしれません。それでも素晴らしい相模湾の眺望、蜜柑畑の自然中を散策するだけでも十分に楽しめます。
杉本先生の世界観を理解し、江之浦測候所を満喫するには、杉本先生の著書「江之浦奇譚」を読んでから行くのがおすすめです。江之浦リトリート 凛門の客室には「江之浦奇譚」が置いてあります。
江之浦測候所は、事前予約・入替制ですのでご注意ください。チケットは、インターネットから事前に購入することが必要です。(受付期限はクレジットカード2日前、セブンイレブン払いは3日前まで、江之浦リトリート 凛門宿泊者はホテルにお願いするとチケットを確保しておいてくれます。)入場料は3,300円/名です。
午前の部:10:00~13:00、午後の部: 13:30~16:30、それぞれ3時間の見学時間の中で自由にご見学いただけます。ただし、各回終了時刻の45分前までに入館しないといけません。
敷地内は広大ですので、ゆっくり回ると2時間で足りないくらいです。時間に余裕をもって訪れることをお勧めします。
待合棟
まず最初にガラス張りの待合棟の方に誘導され、受付をします。
待合棟になにげなく置かれているテーブルには、樹齢1000年を超える屋久杉が使用されていて、高野山の大観寺にあった水鉢が支柱となっているそうです。
ここに、有名な「青天を衝け」の題字が展示されています。
杉本先生の著書が展示されており、購入することも出来ます。「江之浦奇譚」はサイン入りです。
受付でパンフレットを頂けますので、それを見ながら見学をします。特に順路が決まっているわけでもなく気ままに測候所内を散策し、何気なく配置されているお宝をパンフレットを見ながら見つけていきます。
明月門
測候所の入口には、鎌倉の明月院の正門として室町時代に作られた「明月門」があります。
夏至光遥拝100メートルギャラリー
海抜100メートルの地点にある100メートルのギャラリーです。夏至の日の出の線に沿って建てられていて、夏至の日に海から登る太陽光が差し込みます。
ここには、杉本先生の代表作の一つである「海景」シリーズが展示されています。
「海景」は、世界中の海岸で水平線が上下均等に分けている構図の写真を撮影した作品です。この写真で木が映っているのは建物の前の風景が映り込んでいるためです。
ギャラリーの端は海に突き出した展望台のよういなっています。相模湾が一望でき、遠くの小田原の市街や真鶴の海岸線が望めます。
冬至光遥拝隧道
冬至の日の出の線に沿っては隧道(トンネル)が設置されています。当時の日には、相模湾に登る太陽光がこのトンネルを通り、先の石を照らします。
光学硝子舞台と古代ローマ円形劇場写し観客席
冬至の軸線に沿って、京都の清水寺のように檜の懸造りの上に光学硝子が敷き詰められた舞台がつくられています。観客席はイタリア、ラツィオ州のフェレント古代ローマ円形劇場遺構を実測し、再現しています。
石舞台
この石舞台は能舞台の寸法を基本として作られています。石橋の軸線は春分秋分の朝日が相模湾から登る軸線に合わせて設定されています。
歴史を感じる石
榊の森~蜜柑畑~竹林を散策
竹林の中に突然現れる高等数学の世界です。
片浦稲荷大明神
化石窟
蜜柑栽培の道具小屋を整備して、アンモナイトや三葉虫、ウミユリなど数億年前の生物の化石を展示しています。
隕石も展示しています。その上に龍神村の「落石注意」の看板があるのも、杉本先生なりのユーモア。
昔のタバコ屋さんのショーケースにはメソポタニア時代の青銅器が何の説明もなく置いてあります。
蜜柑畑でとれた、無農薬のゴールデンオレンジやレモンが販売されています。
春日大社
2022年春に奈良の春日大社がこの地に御霊分けされました。
海と朱色の本殿が美しく映えます。
石造鳥居と茶室「雨聴天」
江之浦には千利休作と伝えられる茶室「天正庵」跡があります。利休は、秀吉の小田原城攻めの際に同行し、諸将慰撫のために作った茶室です。
旧奈良屋門
箱根宮ノ下にあった名旅館「奈良屋」の別邸に至る門が廃業に伴い、寄贈されました。
奈良屋旅館は、日本国憲法の草案の一部がこの旅館で書かれたり、岸信介元総理の別荘として利用されたりしました。
アクセス
- 江之浦リトリート 凛門のすぐ横
- JR根布川駅から送迎バスあり(時間は以下の公式サイトをご覧ください)